レヴォン・ミナスィアン監督のアルメニア映画『殺し屋狂騒曲』は、携帯電話を拾ったことから、殺し屋にされてしまったクラリネット奏者の物語だ。旧ソビエト連邦時代に著名なオーケストラの指揮者をしていた亡父に育てられたクラリネット奏者のアリク。今は弱小楽団の運営資金に四苦八苦している。ある日、バーで拾った携帯電話にかかってきた電話の声に従うと、そこには札束と拳銃の入った紙袋があった。その携帯電話は殺し屋への連絡ツールだったのだ。アルクは事件に巻き込まれていく。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017で16日、長編コンペティション部門のノミネート作品として『殺し屋狂騒曲』が上映され、ミナスィアン監督との質疑応答が行われた。アルメニア映画がこの映画祭にノミネートされるのは初めて。観客から映画で使われている言語についての質問があった。「この映画では2つの言語が使われています。全体としてはアルメニア語が話されていますが、女優のマリア・アフメトジャノワはロシア語で話し、それに対して主演男優のアリクはロシア語で応答しています。アルメニア人は2つの言語を話せるのです」とミナスィアン監督はアルメニア国内の言語事情について説明した。

この映画にはオーケストラの楽団員という比較的つつましい種類のキャラクターと、町の権力者といった剛腕な種類のキャラクターが出演しており、権力者側を演じる俳優の多くが太っている。この指摘に対し、ミナスィアン監督は「私にとっての善は美しいもの、ミュージシャンなどで、悪は旧ソビエト連邦時代の権力者、太った人などのイメージがあります」と回答、太ったキャラクター像に悪のイメージを込めて演出したようだ。

ミナスィアン監督は主人公の祖父の役としてこの映画にも出演している。役者と監督のどちらが好きかと問われたミナスィアン監督は、「役者としては大したことがない。監督のほうが好きです」とはっきりと答えた。


(2017年7月16日午後5時、SKIPシティ映像ホール)(矢澤利弘)