子供が子供を育てられるのだろうか? 祖母を失い、奔放な母に置き去りにされてしまった10歳のヤルカ。そして、過保護な親に束縛されている友達の少年。イヴェタ・グローフォヴァー監督のスロヴァキア映画『リトル・ハーバー』は、愛に飢えた少女と愛に縛られた少年が双子の赤ちゃんを育てようとする物語だ。

開催中のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017では、16日午前10時半から長編コンペティション部門のノミネート作として『リトル・ハーバー』を上映し、プロデューサーのカタリーナ・クルナーチョヴァーさんをゲストに迎えて質疑応答があった。

スロヴァキア映画がこの映画祭で上映されるのはこの作品が初めて。チェコとの共同製作。本作は少年と少女が、押し付けられた双子の赤ん坊を自らの手で育てる姿を描いたショッキングな内容だ。実話を基にしている。スロヴァキアの作家が書いた有名な小説が原作だという。「その作家は10歳の女の子が2、3日の間、赤ちゃんを育てたという新聞記事を読み、小説家した。もっとも、小説は映画よりも複雑で、その子供が大人になった時点で、語りかけるという展開になっている」とクルナーチョヴァーさんは説明する。映画は恵まれない環境にいる少年少女を描いているが、ラストシーンは一転してファンタジー調な演出になっている。一意的なエンディングにはなっていない。その意図について、クルナーチョヴァーさんは、「オープンな形にしておきたかった。ハッピーエンディングにして、原作本とは違うものにしたかった」との考えを示した。

主演の女の子ヤルカを演じるヴァネッサ・サムヘロヴァーも印象的な役回りだ。「監督が国中を探し回った。200人ぐらいを50人に絞り、10人に減らし、2人残って、最終的に1人を選んだ。その結果、映画祭では主演女優賞を2つも獲ることができた。撮影直後にはもうやりたくないと言っていたが、今は演劇のコースで勉強しているので驚いている。反対に男の子の役の少年とはサマーキャンプで出会い、一目惚れして一回で決まった」クルナーチョヴァーさんはキャスティングの裏話を明らかにした。

ただ、映画の内容からして、なかなか配給の国際展開は難しいようだ。「ヨーロッパ、韓国、日本の映画祭では上映されたが、商業的には厳しい。フランスでも難しいと言われた。中国では配給が決まっており、スカンジナビア諸国では話を進めている。スロヴァキアではかなりの観客数となったが、PRやマーケティングツールをたくさん使った。子供にも見てもらえるようにプロモーションした」とクルナーチョヴァーさん。

導入部が若干冗長ではあるものの、中盤以降は徐々に緊張感がみなぎってくる。終わりの数分間、幻想的なラストシーンに一筋の開放感と救いが見えてくるようだ。


(2017年7月16日、午前10時半、SKIPシティ映像ホール)(矢澤利弘)