奈良の薬師寺の「食堂(じきどう)」が完成したことを記念したコンサート「珠玉のJazz and Pops in 薬師寺」が24 日、薬師寺食堂前特設ステージであり、ジャズ、シャンソン、ブルース、ポップスの名曲の数々が演奏された。6月10日から25日まで行われた音楽祭「第6回ムジークフェストなら」の公演のひとつ。出演はR&B・ソウルシンガーの上田正樹、ジャズ・バイオリニストの寺井尚子、結成59 年を誇る関西ジャズ界の名門老舗バンド「アロージャズオーケストラ」、司会は音楽プロデューサーの西田武生。

冒頭、薬師寺の松久保伽秀執事が挨拶し、食堂を紹介した。食堂は僧侶が集い、食を共にした場所。もとの食堂は、今から1300年前の730 年頃建てられ、973年に焼失。1005年に再建されたが、年代は不明だが再び失われ、 2017年に再建された堂内には田渕俊夫画伯により描かれた本尊「阿弥陀三尊浄土図」を中心に、全長50メートルにわたる壁画「仏教伝来の道と薬師寺」が奉納されている。2017 年5月26日から 28 日に落慶式典が行われた。終演後に食堂の特別拝観が可能なので、ぜひ食堂の内部もじっくりみてほしい。長い時間の流れの中に今の自分がいることを受け止め、音楽を聴いて生きている喜び、楽しみを感じてほしい、と結んだ。

 

奥がステージ、右の建物が食堂


アロージャズオーケストラによる「A列車で行こう」の華やかな演奏でコンサートは幕を開けた。黒いタイトドレス姿で寺井尚子が登場。トランペットとバイオリンの掛け合い「チュニジアの夜」でムードを盛り上げる。「煙が目に染みる」に続いて、「 Its All Right With Me」では、寺井のバイオリンとアロージャズオーケストラのリーダーで 80 歳になるトロンボーン奏者の宗清洋の円熟したバトルが繰り広げられた。


「愛の讃歌」をしっとりと聴かせた寺井は、「この曲はもとはシャンソン。メロディーが美しければ、原曲のジャンルにとらわれず、それをいかに「ジャズる」か、ということを考えて演奏している」と語った。ギターとバイオリンの掛け合いが見事だった「スペイン」で前半は終了。

 

後半は、帽子を目深にかぶり、サングラスをかけた上田正樹が登場し、「Feelin Fine 」で再開。2曲目の「BEETHOVEN/Symphony No.9」はベート―ベンの「交響曲第9番」第4楽章の合唱のメロディーをアレンジし、ベート―ベンが第9に願いをこめた「人類の平和」を上田流の歌詞とリズムで表現した。「夏の思い出〜Summer Time〜夏の思い出」「Twinkle twinkle little Star Stardust〜きらきら星」では、日本でなじみの深い童謡がブルースになるとしっとりとムーディーな曲にがらっと様変わりすることに、驚き感動を抱いた観客が多かったことだろう。

世界中でヒットし、誰もが一度は耳にしたことのあるだろう名曲「A song for you」「My one and only love 」は、上田の成熟した歌唱力で切なさを存分に表現した。最後は、上田自らが作詞した「Thats all I wanna do 」で、歌うことの喜びを爆発させた。


アンコールは、上田の代表曲「悲しい色やね」。寺井のジャズバイオリンも加わり、会場の観客も「Hold me tight」と一番盛り上がるさびの部分では声を合わせ、薬師寺での最高に楽しいひとときを締めくくった。

終演後、観客たちの多くは完成したばかりの真新しい食堂の内部を見学し、ライトアップされた西棟を眺めながら金堂まで足を運び、国宝の薬師三尊像に参拝し、帰路についていた。


ライトアップされた西塔


金堂の薬師三尊像に参拝する観客たち

                                                                             中門の二天王像




2017年6月24日、薬師寺)(城所美智子)