街には色々な人生が詰められている。この映画も都市のそんな一面を見せてくれる。エドゥアール・ベール監督・主演の『パリは今夜も開演中』は、金策のために、パリの街をさまよい歩く劇場支配人の一夜の物語だ。

舞台の初日を前にして、劇場を経営するルイジは苦境に立たされている。役者に支払うギャラもなく、舞台に登場させなければならないサルも確保できていない。そこで、ルイジはインターンの女性と一緒にパリの街へ出て行く。彼らは様々な人々に会い、様々な出来事が発生していく。

フランス映画祭での舞台あいさつで登壇したエドゥアール・ベールは「パリの街を歩くと、60年代、70年代の夢みる風景がある。自由で空想を膨らませることのできる時代だった。そんな時代にオマージュを贈りたかった」と、この映画を作ったきっかけについて陽気に説明した。

明日には舞台の初日を迎えるという貴重な時期に資金がないというシビアな設定だが、街をさまようルイジにはあまり緊迫感が感じられない。また、それぞれの登場人物のキャラクター説明が希薄なため、せっかく魅力的な役者たちが出演しているにもかかわらず、彼らを活かしきれていない。

ただ、そんなことよりも、主人公にはパリの街を行き当たりばったりに行動させ、観客にはルイジとパリの人々との掛け合いを楽しんでもらおうという趣向なのかもしれない。そのため、群像劇特有のまとまりのない散漫な展開になってしまうきらいがあったのは残念だった。だが、登場するキャラクターや個々のエピソードはなかなかスパイスが効いている。劇中に登場する日本人のキャラクターの名前はダザイ。彼が川端康成風の舞台を演出しているという設定だ。サルの使い方も意外性があった。完成度は決して高くないが、パリの一夜をスケッチ風に描いた小品として、夜のパリの雰囲気を楽しむべき映画なのかもしれない。 (写真は エドゥアール・ベール監督)


(2017年6月24日午後9時20分、TOHOシネマズ日劇スクリーン3、フランス映画祭)(矢澤利弘)