image

 広島交響楽団第20回廿日市定期演奏会が23日、広島県廿日市市の廿日市文化ホールさくらぴあで行われ、チャイコフスキーの作品3曲と、オペラの人気曲7曲の全10曲を演奏した。日本を代表するソプラノ歌手の佐藤しのぶと、夫で神奈川フィルハーモニー管弦楽団名誉指揮者の現田茂夫が共演した。
 
 前半は、チャイコフスキーの2曲を演奏した。1曲目は、チャイコフスキーのバレエ音楽「眠りの森の美女」より「ワルツ」。流れるような美しい旋律が印象的で、コンサートの幕開けにふさわしい華やかな演奏だ。現田は、指揮棒を使わず、全身で音楽を表現し、特に両手の指をしなやかに細かく使いながらオーケストラを導いた。

 2曲目は、チャイコフスキーの弦楽セレナード。バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスが重なり合い作り出す美しいハーモニーが柔らかい。特に第1楽章と第4楽章で繰り返される序奏のメロディーが切ない。
 
 休憩をはさんで3曲目は、グノーの歌劇「ファウスト」より「ワルツ」で再開。3曲目が終わると、淡い緑色のドレスに、きらきらしてまぶしいゴージャスなイヤリング、ネックレス、ブレスレットを身にまとった佐藤しのぶが登場した。ステージは一気に華やかさを増し、会場の観客は期待を込めて拍手で迎えた。

 4曲目に、グノーの歌劇「ファウスト」より「なんと美しいこの姿(宝石の歌)」、5曲目にプッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」を披露した。豊かな表情、身振り手振りで全身を使った演技と、柔らかく伸びやかに響く歌声に観客からはブラボーと大きな拍手が送られた。夫の現田や広島交響楽団のメンバーも、拍手を送っていた。

 6曲目のプッチーニ、歌劇「マノン・レスコー」より「第3幕への間奏曲」を現田とオーケストラが演奏している短い間に、衣装替えをした佐藤は、胸元はゴールド、和柄が施された黒のシースルーのシックなドレスで登場。再び会場を湧かせた。

 7曲目、プッチーニの歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」を高らかに歌い上げたあと、佐藤が指揮台の上にいる夫の方を見ると、現田が「よかった」と言ってうなずいて、佐藤も笑顔になっていたのは、夫婦共演ならではの光景だった。

 8曲目は、プッチーニの歌劇「蝶々夫人」より「かわいい坊や」。直前の曲とは一変した険しい表情で情感たっぷりに表現し、オペラの名曲4曲を歌った佐藤に対して、ブラボーと大きな拍手が長い間鳴り止まなかった。ドレスの裾をふわっとなびかせて、ステージの上を優雅に歩く佐藤の姿に、一種のオーラのようなものを感じた観客も多かったはずだ。

 最後は、チャイコフスキーの幻想的序曲「ロメオとジュリエット」で、重厚に締めくくった。アンコールでは、佐藤が今度は深紅のドレスで登場し、ビゼーの歌劇「カルメン」より「ハバネラ」を熱唱。最後は手にもっていた1本の深紅のバラを会場に投げ込む演出付きだった。

 観客には着物を着た女性やおしゃれな格好をしている人が多く、今日のコンサートを特別に楽しみにしてきた様子が伺えた。そんな観客たちの期待に十分に応える充実した2時間だった。


(2017年4月23日、廿日市文化ホールさくらぴあ)(城所美智子)