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 23日から開催されていた第3回グリーンイメージ国際環境映像祭が25日に3日間の全日程を終え、グランプリに当たるグリーンイメージ大賞には、山田徹監督の『新地町の漁師たち』が選ばれた。

 同作品は、福島県新地町の漁師たちを2011年から3年半の歳月をかけて記録したドキュメンタリーで、東日本大震災による津波と原発事故が漁師たちに与えた矛盾や困難を描いている。山田監督は「自分一人で作ることのできた作品ではない。これからも上映活動を続けていく」とコメントした。

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『新地町の漁師たち』の山田徹監督

 審査員特別賞は、エファ・シュトッツ監督の『100万回のステップ』と顧桃(グー・タオ)監督の『最後のハンダハン』の2作品に贈られた。


 25日に上映されたのは、『100万回のステップ』、『スティックス&ストーンズ』、『縄文号とパクール号の航海』のコンペティション作品3本と特別上映作品『里馬の森から』の計4本。

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 『100万回のステップ』はタップダンサーの視点から見たイスタンブールの社会抗議運動を描いた作品。軽快な足音を立てながら路上でステップを踏む女性のタップダンサー。どんなにつまらない日常だって、街に流れる音楽とリズムは、思わず人々を楽しくさせてしまう魔法がある。政府に抗議するデモ隊のシュプレヒコールでさえリズミカルに聞こえてくる。そんなデモ行進に向けて、警官隊が催涙ガス弾を打ち込む。ダンサーは戦う人々を目にし、彼女のタップの音は、彼らの行動と連動するかのように力強く鳴り響き続ける。この映画を見ていると、世の中のあらゆるものが躍動しているかのように感じられるから不思議だ。皿を叩く音、ペットボトルを叩く音、建物を解体するハンマーの音さえがリズムであり、音楽なのだ。


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 アイザック・キング監督の『スティックス&ストーンズ』は技術とソーシャルメディアに媒介された少年の冒険を描いた4分間の短編アニメーション作品。面白半分にアリの群れを踏み潰して遊ぶ少年。ちょっと視点を変えて、自分がアリになったと仮定してみるとどうだろう。少年によってアリは自分の命を落とすのである。それがわかると、少年はアリを踏み潰すことができなくなる。一歩立ち止まって、相手の身になって考えてみる。そうすることで世界は変わっていくだろう。この作品は、自分の立場と相手の立場を瞬時に入れ替えるというアイデアをアニメーションを使うことで的確に表現している。


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 水本博之監督の『縄文号とパクール号の航海』は、探検家、関野吉晴が企画したインドネシアから日本までの丸木舟による航海を追ったドキュメンタリー作品。ひとくちに航海といっても、この航海は単純なものではない。いにしえの人々と同じ方法を追体験するという目的のもと、砂鉄から鉄工具を作り、チェーンソーなどを使わず、手製の工具で木を切り倒し、舟を作り、4700キロを航海するというものだ。
 舟にはマンダール人6人と日本人4人。彼らが狭い舟のうえで一緒に暮らす。当然仲違いも起きる。この映画は彼らの群像劇であり、決して関野という一人の冒険家のヒーロー物語ではない。航海は中断を重ね、インドネシアから石垣島に到着するまで3年間を要した。冒険といっても安全を第一に考え、リスクを避ける姿勢が随所に感じられる。
 3年の航海で収録した映像は約800時間。10パターン以上を作って、伝えたいことが伝わるように編集するのにさらに3年がかかった。映画の完成までには計7年かかったという。


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 尾立愛子監督の『里馬の森から』は山から木を馬と共に搬出する「馬搬」を巡る生活や文化を1年に渡って記録した作品。50年ほど前にはよく見られた人が馬と一緒に暮らす生活は今ではまず見ることができない。だが、機械に頼らず、山や自然を破壊しない馬による木材の搬出が最近になって最注目されている。上映後には「馬と暮らす里山」と題するシンポジウムが開催された。

 21回続いたアースビジョン・地球環境映像祭を引き継ぐ形で開催されてきたグリーンイメージ国際環境映像祭。3回目を終え、作品の質も観客数もレベルアップしてきているようだ。次年度のさらなる発展に期待したい。

(2016年3月25日、日比谷図書文化館、グリーンイメージ国際環境映像祭)(矢澤利弘)