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ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の会場でインタビューに応じるティム・リーグ 

米国テキサス州オースティンで開催されている映画祭「ファンタスティックフェスト」のプログラミングディレクター、ティム・リーグ。彼は同州を中心に展開するダインシネマ(レストラン機能を備えた映画館)アラモ・ドラフトハウスシネマの創立者で最高経営責任者でもある。

まず彼は、どのようしてあこがれの映画ビジネスの世界に入ったのか。そのきっかけは、ただ映画が好きだったからという単純なものだった。「実は映画や映像の勉強をしたことはありません。技術者としてのキャリアを進むためにその勉強をしました。シェル石油に入社したのですが、働き始めてからすぐにそれが間違いであったと気付きました。会社に通勤する道の途中、リースの看板が出ている映画館があるのを見つけました。それを見て、すぐに仕事を辞めてそこを借りて映画館を始めました。それが映画ビジネスに携わった最初のきっかけです」。


経験もなく、新たなビジネスを始めるのは難しくはなかったのだろうか。「実際に始めてみたら、非常に大変で、すごく難しかったです。でもそのときは若かったですし、やる気もあったので、いろいろとやっていくうちに自分で勉強しました」とティムは創業当時を振り返る。


手探りで始めた映画館経営だったが、映画館はチェーンとして館数を増やしながら拡大していく。その秘訣はどのようなところにあるのだろうか。「一つだけ言えることは、まずお客様に楽しんで頂けるように、見る側に立って考えました。他の劇場とは違ったことをやろうとしたのです。簡単に言えば、自分の好きなことをやり、嫌いなことはやらないというのがスタートです」。


ティムの掲げた方針は次の通りだ。「まず、6歳以下は入場させません。他の劇場がやっているように、映画の上映前のCMや広告はやりません。それから映画を見ている最中のおしゃべりに対して、厳しく対処しました」。


順調に映画館経営の舵取りをしていくなか、ティムは映画祭を開催することを思いつく。「7年前にファンタスティックフェスティバルを始めたのですが、ファンタスティック映画に特化した映画祭を始めたのは、まずこのジャンルが好きだったからです。しかし、そういった特別なジャンルを扱った大きな映画祭はアメリカにはありませんでした。自分が選んだジャンルというのは一般的にあまり良くない映画であるとか、低レベルの映画であると認識されているところがあります。しかし、そういうところに光を当てたいと思いました」。


映画祭は当初は小規模なものだった。「映画館を経営していましたので、最初は映画館のスタッフを使ってかなり低予算で小規模に始めました。それが段々と大規模になっていきました。予算としては、最初は10万ドルぐらいだったでしょうか。今は75万ドルぐらいになっています。観客数も最初は2000人ぐらいでしたが、今は2万人ぐらいになっています」。

映画祭は、最初は地元のテキサスのオースティンを中心に開催していたが、年を追うごとに段々と全国的になり、そして国際的になっていった。動員数も増えた。

この映画祭が観客をひきつけているのは、まずプログラミングがいいということ。「パーティーや懇親会も開いています。とにかく楽しいフェスティバルということで、お客様には楽しんでいただきたいです。映画祭でつまらないことはなくそうというテーマをもとにやっています」。

ティムは作品の選定については一番の権限を持っている。だが、他のメンバーとも協力しながらプログラミングをしている。「6人のプログラマーがいますが、 一人一人が個性豊かなメンバーなので、その人たちが持ち寄っていろいろなことを考えて試行錯誤しながら作品を選んでいます」。

映画祭が大規模になってくれば、当然に多くのスタッフが必要になる。「もちろん劇場のスタッフだけでは足りないので、映画祭を愛してくださっている方たちにいろいろな支援をしていただいたり、スタッフを雇用したりしています。例えば、映画祭のときには、映画館のあるショッピングセンターのなかのバーをイベント広場のようにしてパーティーをやるのですが、そこで働いている人たちが手伝ってくれたりしています」。

映画祭の運営にはスポンサーシップの獲得も大切だ。「実行委員会には常勤でスポンサー探しをしてくれているディレクターもいます。政府からの援助はすごく少なく、市からは5000ドルぐらいです」。現在、スポンサーからの資金は50%程度で、残りの収入は入場料だという。

2万人もの観客をどのように集めているのだろう。「もちろんメディアに宣伝をしてもらわないとお客様は集まらないので、いろいろと活動しています。まず、 PRチームを持っており、例えばマスメディアや新聞社の人々に親切に説明を行って、映画祭を紹介してもらっています。もちろん、いつも劇場に足を運んでくれるお客様たちにも来ていただけるように一生懸命にPRしています」。

映画祭の力が付いてくると、逆に出品したいといってくる映画会社も増えてくる。「最初は全然ありませんでしたが、ここ数年は映画会社のほうから映画祭に出品したいという話がかなり増えてきました。映画祭で上映したあとに、映画監督の評判が良くなって、他でも上映する機会を得たりとか、チケットが沢山売れたりとか、名前が広まったりすることがあるのです」。

「劇場はその場所にずっとありますので地域と密着していますし、映画祭も何年も続けているので、コミュニティと密着しています。ただ、ジャンルがジャンルなので、そのジャンルを好きな人だけが集まってくるということがありますので、その部分では実際、地域に密着しているかどうかは分かりません」。

映画祭のミッションやゴールはどのようなものなのだろうか。「一つは映画制作者がプレスやメディアにできるだけ多く出ていただけることを目指しています。2つ目は、映画業界で自分が紹介する映画に沢山のバイヤーが付くということです。3つ目は観客の皆さんが心から楽しんでもらえる映画を上映したいと思っています」。

最後に、日本の映画ファンの方々へのメッセージをお願いした。「次回の映画祭は前よりももっとすばらしい映画祭にしたいと思っています。テキサス州のオースティンに来ていただければ、自分が映画祭のことなどについて、沢山教えたいと思います。メールを頂ければそれにお答えしたいと思いますので、ぜひお越し下さい」。

(取材・文:矢澤利弘)